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ニュースJAPAN「虫歯治療の知られざる現実」(2009年3月放映)
<要約>
金属の詰め物を作って、はめ込むという、健康保険では定番的治療法は、虫歯になっていない部分を大量に削る必要があります。そのため、治療はかなり痛いのです。
ところが、レジンを使うと無駄に歯を削る必要がありません。世界的にもそうした方向に向かっています。
しかし、現状の健康保険制度ではコスト的に難しい上に、歯科医の認識も遅れているので、ほとんど普及していないのが現状です。

はめ込み式の金属(金属インレー)の問題点とは

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健康保険の金属と正式な歯科用金属

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歯科で用いられる素材とその特徴

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ガラパゴス化する日本の歯科治療

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3Mixからダイレクトボンディングへ

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ダイレクトボンディング

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あとがき

ナレーションに関西系の訛りがある無料の音声合成ソフトを使ったために聞き取りにくいうえに、字幕がナレーションとは別の内容になっているので、難解なビデオになってしまった点、深くお詫びします。
しかし、見ていただくだけで、ガラパゴス化してしまった日本の平均的歯科医より、深い知識が得られると自負しています。

 

ダイレクトボンディングについて

「ダイレクトボンディング」と言う言葉は、歯を削らずにその表面にレジンを直接盛り上げて、前歯の色や形を治すという、審美的治療方法を指し示すのが一般的な使い方です。しかし、私はそれを虫歯治療にまで拡大解釈して使っています。もっと一般的な言い方をすれば、「健康保険外診療のレジン充填」という事になります。しかし「充填」という言葉は、単に穴をふさぐという意味合いを持っていますので、使いたくなかったのです。
また、近年は高機能なセメントも入手できます(ex. ドックベストセメント、プロルートMTAなど)。これらをうまく使えば労力を省くこともできるのですが、歯をできるだけ削らない方針で行くと、セメントとレジンの二重充填は無理なことが多いのです。そのため、セメントを介さずに歯に直接レジンを接着するという意味を込めて、「ダイレクトボンディング」という言葉をあえて使っています。

 

3Mixについて

便宜上3Mixと表現していますが、実は抗菌剤のメトロニダゾールを液状レボフロキサシン(ニューキノロン系の抗生物質)で練った2Mixを基本としています。これは3Mixの生みの親である岩久先生の、「安全性の高いメトロニダゾールだけの1Mixでも目的は果たせる」というご指導に基づいて行っています。また蛇足ながら、3Mixに好みの抗生物質を加えたものを「新3Mix」と岩久先生は命名しています。
3Mixはセメントに練り込むばかりではなく、神経に直接塗布したりして、神経の炎症を抑え、無痛的に虫歯が除去できる環境を作るのに役立てています。

 

本気のレジン充填

2006年頃、「従来の考えではレジンの適応外とされた大きな虫歯にもレジンが適応されるようになってきている」という、アメリカ在住プロフェッサーからのレポートが、日本の歯科雑誌に載ったことがありました。そして「いくら歯科医がセラミックを勧めても、レジンを希望される患者さんが後を絶たない」とも書かれていました。ともかく、たいへん大きな虫歯をレジンで治した写真は衝撃的でした。私は卒業後に、詰め物を専門とする教室で学んでいましたし、神経を取る治療にもうんざりしていたので、アメリカ在住プロフェッサーのような見事な治療ができるのかと自問しながらも、やりたいという衝動を抑えきれずに研究を始めました。

その昔に取り組んだ3Mixは、どちらかと言えば失敗でしたが、その失敗体験と、当時、すでに手がけていた麻酔注射なしで行う、お子様向け無痛治療とが、海外で始められていたレジン治療と合体して現在のダイレクトボンディングへと発展しました。

新しいレジン治療を始めて間もないころ
「保険で出来る治療を何の権限があってアンタが勝手に値段を決めてやるのよ。治療費は国が決めるものよ。私は歯科医院で受付をしていたから何でも知ってるわ。友達の歯科衛生士も、そんな治療、知らないと言ってたわ。」
と元気の良い奥さんに怒鳴りこまれたこともあります。海外で行われているようなレジン治療は歯科医ですら、当時はほとんど知られていないものでしたので、こうした批判が出ても当然だったわけです。
そこで気になる治療費ですが、虫歯の大きさや深さによってかわりますが、1万円から3万円ほどです。そして最多価格帯は2万円程度です。虫歯は健康保険を利用して、タダ同然で治すことになれてきたので、ずいぶん高いように思うかもしれませんが、自家用車や高級腕時計、あるいは住宅などの耐久消費財の修理費と比べて決して高いとは思えません。何しろ歯は一生ものですし、一度削った歯は二度と戻りません。

一度ダイレクトボンディングを体験すると、
「他の虫歯も(ダイレクトボンディングで)」
とか、それどころか
「保険の詰め物を全部(ダイレクトボンディングで)詰め替えて欲しい」
という患者さんも少なからずおみえになります。また
「ここ(にしきデンタルオフィス)以外でもう治療したくない」
という声もありました。

*注意事項*
治療時間は従来の治療より長くなりますので、お口の中が乾燥しやすくなります。通常は問題ありませんが、口内炎ができやすい人、冬になると唇がカサカサして切れやすい人は、治療後に口内炎ができたり唇が切れたりすることもあります。それが気になる方は、ご遠慮ください。
また、薬物アレルギーがある人、顎関節症の人は必ず事前にご相談ください。
なお、口内炎ができやすい、唇が乾燥する、顎関節症であるという方は「美人になる歯科矯正」コースで治療されることをお勧めします。

 

神経を取るということは

先生:「虫歯が大きいので、神経を取ります」
患者:「えっ!歯を抜くのですか?」
先生:「いえいえ、歯の中の神経を取りますが、歯そのものはとりません」
患者:「それは良かった」
こうした会話はありがちなんですが、神経を取ることは、決して安心材料ではないのです。それに安易な思い込みはしてはいけません。

第一の問題は、歯を抜くよりは痛くないだろうという、患者さんの思い込みです。歯を抜くときには、あの手この手で麻酔をすることができます。しかし神経を取る時には、麻酔をする手段も限られますので、結局、神経を取る治療は歯を抜くことと同等か、それ以上に痛いものになるのです。

第二の問題は、神経をとると歯の寿命を縮めるということが、あまり知られていないということです。歯科医でも、正しい治療をすれば歯の寿命に影響はないと信じている人の方が多いものです。そしていざ抜くときには、その原因を本人の歯磨きのせいにしているので、そうした歯科医は、いつまでたってもその事実を認めようとはしません。しかし、歯は削った分は弱くなって、寿命に影響するのは事実です。昔は金属を入れて補強すれば良いという考えでしたが、実はそんな単純なものではないということがわかってきました。それに、神経がないと再び虫歯になっても気がつきません。神経を取れば寿命が縮まるという論文も出ていますし、私の歯医者としての経験もそうですし、そしてなにより、ご年配の方はそうした事を身を持って体験しているのです。
神経を取るということは、抜歯へのパスポートだと考えるべきです。

第三に、歯の神経は複雑な枝分かれをしていますし、歯の根が直角に曲がっていたり、神経が極端に細くなっていることもありますので、実はどんな上手な先生でも、成功率100%はありえないのです。それほど難しい治療ですから、痛みがとれても治療が成功しているとは限らないのです。むしろ世の中には失敗としか考えられない治療がゴマンとあります。それどころか、良い治療を狙うと、治療中の痛みや治療回数が増える傾向にあるので、患者さんに「痛くなく早く終る歯科医院」を印象づけるために、わざと手抜きしているのではないかと思うほどというのが、残念ながらその現状なのです。もちろん良くない治療は、ただでさえ縮む歯の寿命を、さらに縮めることになります。

第四に、昔ながらの強い薬が治療に使われるということです。フォルマリンを含むものもありますので、今ではとても認可が降りない薬でしょう。もちろん、もっと安全な薬で治療をする先生もいます。かつての私もそうでしたが、治療中の痛みが取れるのに回数がかかりますので、患者さんのストレスも増えます。ですから、今では昔ながらの薬を使っています。そもそも、そうした薬は古くから使われているので、今さら安全性がどうこうと批判される筋合いの物でもないのです。確かに野蛮な薬かもしれませんが、それ以前の問題として神経を取ること自体が、それ以上に野蛮な治療法なので、本来批判を受けるべきは薬ではなく、その治療法そのものなのです。

第五に、「ファイル」(英語でヤスリという意味もある)と呼ばれるマチ針のような治療器具は、歯の中とは言えども、体内に挿入される物には違いないので、手術器具同様きちんと滅菌されていなければなりません。現在の一流メーカーのファイルはオートクレーブ(#)にもよく耐えますが、それでもファイルが傷まないように簡単な消毒で済ませている先生がいないとは言いきれません。
今世紀に入ってしばらくした頃に「オートクレーブを使って(ファイルを滅菌して)いるのは珍しいですね。普通そこまでしてません。」と業者さんに言われたことがあるのは恐ろしい事実です。
# オートクレーブ:高圧蒸気滅菌装置。細菌を死滅させることができる装置。最も信頼されている方法ではあるが、金属が錆びやすくなるとか機械が壊れやすくなるという欠点がある。ファイルの値段の割に歯の根の治療費は安いので、ファイルの寿命を縮めるオートクレーブを使わず、アルコールで拭いただけで使い回す歯科医がいても止む終えない現状がそこにある。

どうでしょうか。それでも歯さえ残れば神経はなくてもかまいませんか?